武蔵野の閑静な住宅地に佇む、茶室に付随する露地(茶庭)計画。施主より依頼を受けたのは、既存の茶室へと至る動線を、単なる通路ではなく「心を整える時間」として設計してほしいという言葉だった。露地は本来、俗世から茶室という非日常へと客人を導くための緩衝空間である。今回のプロジェクトでは、その古典的な役割を現代の住宅事情に合わせて再解釈し、限られた敷地の中に奥行きのある体験を凝縮させることを目指した。
中心となるのは、御影石を用いた飛び石と、蹲踞(つくばい)である。飛び石は歩幅や視線の向きを緻密に計算しながら配置し、歩く速度そのものをデザインした。一つひとつの石の高さと目地の幅をわずかに変えることで、客人は自然と足元に注意を向け、思考が静まっていく。蹲踞の水音は、庭全体の背景音として機能し、鳥の声や葉擦れの音と重なり合いながら、四季を通じて異なる表情を生み出す。
苔と楓を中心とした植栽計画は、四季の移ろいを一年を通じて感じられるよう構成した。春の新緑、夏の深い陰影、秋の紅葉、そして冬の霜に包まれた静寂——それぞれの季節が、露地を歩く客人に異なる物語を語りかける。石組みは常にそこにありながら、光と植物の変化によってまったく違う庭として立ち現れる。この「変わらないものと変わりゆくもの」の対比こそが、本プロジェクトの核心である。
"Every step across the stones is a breath taken toward stillness."
露地は庭ではなく、時間そのものをかたちにする試みだ。石を渡るたびに、訪れる人の呼吸が変わっていく。
— チーフデザイナー、Granite Delta